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「バイロイト音楽祭」の魅力 ― 講座を拝聴しての雑感

「バイロイト音楽祭」の魅力 ― 講座を拝聴しての雑感
岩佐 えり子(An die Musik 主宰)
自身の主宰するコンサートが終わり、時間の余裕も出来たので出掛けたレクチャー。実はワグネリアンではないどころか、その反対のブラームスにより興味を持つ者であり、この様な私がお邪魔して良いか?と思いつつの参加でした。
会場には既に熱心な聴講者が着席されていて始まった講座。「社会文化的現象としてみた」との副題がある様に、現代のドイツでの子供達への親しみやすいテレビ放送の事、作品が上演されるまでの舞台裏の事情などをDVDと解説して頂き、思わずどんな舞台になるのかの興味が湧いてきます。
その昔に訪れたバイロイト。アンチとは言え、その舞台くらいは見ておくべきかとバックヤード見学に参加しました。流石にワーグナー自身の作品を存分に表現する為の工夫があらゆる所にあり、感嘆したものでした。舞台装置変換の為の広大なスペースに、視覚を刺激しないオケピットの作りなど。ただその舞台自体がかなり湾曲しており、舞台に立つ歌手達は大変であろうと思いを馳せたり。
客席の固く四角い小さな椅子を見た時は「こんな椅子の上に何時間も座って聴くなんて!」と思わず拒否反応が出ていました(Verona の Arena ではそれこそ硬い石の上に夜中の1時までオペラを鑑賞しましたが…)。そうして毎年バイロイト詣をする各国の政治家達にも私の心は魅了される事は無かったのです。しかし今回始まったこの講座では現在の様子を丁寧に教えて頂き、何かに肩入れするのではなく、現代の事情を伝えて頂きました。
資料としていただいた村上春樹氏の文章も興味深く、私個人的にはただの好き嫌いで物事を判断している自身の稚拙さに赤面の思いでした。世の中には沢山の音楽があり、自身の求める物は持ちつつ、広く社会を勉強していかねばならない事を今更ながらに、「学ぶ」という根本姿勢を思い出させて頂きました。大変興味深いこのシリーズが次回も開催されます事、知的好奇心旺盛な皆様に素敵な機会となります事を心よりお祝いしたく思います。